国際学術集会出席報告書

                            2003年11月1日 集会名称 The 11th International Cochrane Colloquium 開催期日 2003年10月26日(日)〜10月31日(金) 開催場所 スペイン バルセロナ市 Fira Palace Hotel 出席者  山口大学医学部 市原清志      山口大学医学部 石田 博      東京医科歯科大学 西堀眞弘 (1)本学術集会の概要  年に1度開催されるCochrane Collaborationの学術集会で、今回は5つのPlenary Session、26セッションの口演、156のポスター発表の他、80のワークショップと数多 くのビジネミーティングが組まれていた。参加者リストには880名が掲載され、殆ど が英国、地元スペインをはじめヨーロッパ諸国および米国、次回開催国のカナダ(オ タワ)、次々回開催国のオーストラリアからの参加者で、一部は途上国から招かれて いた。前回目立った中国からの参加者は少なく、日本からは我々を含め6名が事前登 録していた。  また例年経済的基盤の充実が議論されているが、今年はノバルティスやBMJといっ たスポンサーが目立ち、評価対象となる組織から支援を受けて、果たして中立的なレ ビューができるのかという疑問を禁じ得なかった。  なお、プログラムの詳細は11th Cochrane Colloquiumのホームページ (http://www.colloquium.info/)に掲載されているのでご参照頂きたい。 (2)Workshop: Introduction to research synthesis for diagnostic and screening tests 日 時:10月27日(月)午後2時30分から午後4時 場 所:Room Coral Facilitator: C. Gatsonis, F. Buntix  診断検査の性能評価のための方法論や研究のデザインについて、初学者向けの解説 が中心であった。特に、Dr. Buntix氏は、診断検査の系統的再評価がいかに難しいか と言う点に焦点をあてて、研究デザインの問題点や質の評価について解説していた。 また、Dr. Pai(UC Berkley)が診断検査の系統的再評価の手順、そのソフトウエアに ついて説明をおこなっていたが、非常にわかりやすいものであった。 (3)The Screening and Diagnostic Test Methods Groupのbusiness meeting 日 時:10月27日(月)午後5時から午後6時 場 所:Room Cristal 出席者:C. Gatsonis(コンビーナ), F. Buntix、J. Hilden、我々3名を含む約2 0名  来年末までにこのMethod Groupで診断検査分野の系統的レビューのためのガイドラ インを出版することになり、その具体的な打合せが行われた。またレビュー結果のデ ータベース化プロジェクトが紹介されたが、後でそのひとつのオランダを中心とし たMEDION database(http://www.mediondatabase.nl/)を参照したところ、登録され ているのは通常の書誌情報とアブストラクトだけであった。  診断検査のメタアナリシス用のソフトウエアは、現在、Dr.J. LauがDOS version で提供しているものが唯一であるが、現在、スペインのグループがWindows版を開発 中で、それを中心に共用化を図ることとし、J. Hilden氏が取りまとめることになっ た。また、Cochrane Collaborationがフリーで提供しているRevManのモジュールとし て付加されるものとして位置づけられた。 (4)Workshop: Clinical demand and strategy for multivariate approaches to evidence-based laboratory medicine (Facilitator: K. Ichihara) 日 時:10月28日(月)午後4時30分から午後6時 場 所:Room Lanzarote 演 者:K. Ichihara 司 会:M. Nishibori  検査診断領域における単変量解析に基づく系統的レビューの限界、それを克服する 多変量解析を用いたバイアスの検出と制御方法、そのために開発されたソフトウエア のデモンストレーションおよび質疑応答が行われた。24ものワークショップが並行 で開かれ、検査診断領域のものも複数重なっていたため、出席者は6名と多くなかっ たが、内容については強い関心と高く評価が寄せられた。またメッセージボートに置 いた資料が殆どなくなっていたため、多くの参加者の関心を集めたことが示唆された。 (5)Oral session: Evidence and diagnostic tests and screening 日 時:10月30日(木)午後2時30分から4時 場 所:Room Vivaldi 2 司 会:J. Kleijnen, M. Marzo  このセッションは5演題で、英国ヨーク大のグループからは検査診断の系統的レビ ュー用に開発された分析ツールについて、英国オックスフォード大のグループからは 癌の検査診断について、スペインからは検査診断用のメタアナリシスを行うソフトウ エアの開発について、米国バークレイ大のグループからは検査診断のメタアナリシス における不均一性の評価について、スイスのベルン大のグループからはマラリアを例 に迅速検査の診断性能評価について、それぞれ発表があった。 (6)Poster Presentation: Construction of a Web-based system that collects and provides essential information from diagnosis-related articles in laboratory medicine 日 時:10月31日(金)午前8時30分から9時、午後2時から2時30分 場 所:Poster presentation area 演 者:H. Ishida  検査診断領域において、雑誌に掲載された論文の系統的レビューの結果だけでな く、著者が自分の論文の質を執筆時にチェックした結果や出版には至らなかった研究 のデータ、あるいは、研究自体の登録などを、ホームページを通じて総合的に、しか も共同作業での蓄積、利用ができるシステムの試作結果について、文部科学省石田研 究班から発表を行った。他の参加者からは、MEDION databas等と比較し、エビデンス の生成時から完成までをトータルに網羅でき、かつ、新しい一次研究データが追加す る際にも即時的に可能であること、あるいは他の医学領域にも効果的な応用が可能で ある点で有用性が期待できるとの評価を得た。またJ. Hilden氏からは、このシステ ムもコクランの共用プログラムに含めたいので、情報交換を密にしたいとの申し出が あった。                                    以上