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臨床検査専門医の声

臨床検査専門医の声
ひょうひょうとした検査専門医の明るいライフスタイル
(K医師)

80年代卒業、関東地方の大学勤務男性医師です。

検査の道を選んだいきさつ

私は今から20 余年前、某地方大学を卒業しました。医学部在学中、実習などで臨床教室をいろいろ回りましたが、どこも独特の荘厳さ、見方によっては「陰影」のような重い雰囲気が感じられ、卒業なのに少々滅入っておりました。もう少しカラッとしたところが無いかと探した結果が臨床検査(検査診断学教室)でした。「検査部」というところは、患者さんが亡くなる訳でもなく、企業との共同研究や学生さんとの触れ合いの機会が多く、医学部の中では一種独特の世界です。実は小生、卒業時に受験した某有名研修指定病院は受からず、がっかりしておりました。そこに恩師であるY 教授から、3年居たら留学させてあげるといわれ、出来たばかりの教室に二つ返事で入局した次第です。

入局1年目はO 助教授(のち教授)に師事しコンピュータによる検査データ処理を学び、ついで基礎の教室でモノクロナル抗体の作成法を学びました。2~3年目は臨床研修に挑戦しました。都内の総合病院でレジデントとして各科をローテイトし、心臓カテーテルや内視鏡、消化管の造影も一通りやらせていただきました。この時の経験は今でも大変役に立っております。しかし24時間365日、のべつまくなしポケットベルで呼び出される生活は、必ずしも楽しいものばかりではありませんでした。患者の急変で、結婚式の最中に新幹線で呼び戻されたこともあります。

4年目に入り、留学を前提に基礎の教室で研究技術を身につけるべく、修業させていただき5年目に約束どおりの留学を果たしました。恩師のご指導で奨学金もいただくことができました。行き先米国西海岸。世界最先端のラボでの研究は、刺激に満ちたものでしたが、それなりの厳しさも垣間見ました。観光もたくさんして、友人もたくさんできました。3 年あまり滞在の後、帰国後は母校で学位をいただき、都内の大学で助手にしていただくことが出来ました。

東京の大学病院では、いろいろな医療機関の先生方、企業の方々との勉強会と飲み会が多く、いろんなことを学びました。中でもG教授、T助教授からは、80人近い検査部の技師さんとどう渡り合ってゆくかという、検査部運営論をじかにご指導いただきました。人間の集団である検査部の運営は、教科書にはない難しさと醍醐味があります。現在、関東地方の大学病院で感染管理と内科外来、そして検査部・輸血部の運営を行っております。

検査医の一週間

月曜:
毎朝出勤すると、まずは検査技師さんと検査システムの具合を見て回ります。技師長と業務の相談のあと、細菌検査室に入り、研修医や医局の先生たちと、前日から朝までに検出された微生物検査の全情報に目を通します。このうち、結核菌や血液培養陽性の検体、MDRP など多剤耐性菌の検出状態には特に注目しています。すでに検査技師さんが主治医や病棟に連絡してありますが、病棟は多忙です。適切に対処されているか、電子カルテを開けて確認します。個室収容されているか、主治医が結果を認識し抗菌薬を開始しているかは毎朝のチェックポイントです。不明の場合は病棟に出向き、直接指導を行ったり、カルテの「掲示板」に書き込んだりします。午後からは検査センターの学術相談を受けたり、患者さんや医師に配る書籍やパンフレットの編集にもタッチしています。
火曜日:
午前は月曜と同じ。午後からは近隣の病院で内科の診療を行います。ICD (infection control doctor)でもあるため、病棟の感染制御は私の仕事。スタッフに講義をしたり指導を行います。
水曜日:
昼過ぎまで内科外来。私は感染症専門医・暫定指導医でもあるため、とくに感染症、不明熱の診療を専門に行っています。検査室の外から、検査業務を見直すことも、業務改善に役立つからです。午後は検査部や病院の会議、勉強会で弁舌を振るいます。血液培養や耐性菌の確認は午後に行っています。
木曜日:
講義が入ることが多く、実習指導を行うこともあります。夜はカンファレンスや検査部を代表して会議に出ます。私は病院の産業医でもあるため、針刺し事故や風疹の診療に始まり、感染制御と健康管理にも携わっています。
金曜日:
午前中は月曜と同じ。午後からは内科系診療部のカンファレンスに出席して、検体検査の立場からいろいろコメントし、コンサルテーションを受けます。検査室の中にいるだけでなく、技師さんとともに外部に顔を覚えていただくのが、円滑なコミュニケーションに役立つからです。
土曜日:
いつもの午前中と同じ業務の後、研究日として臨床研究に携わります。現在は感染症に関するテーマと、炎症反応、動脈硬化マーカーの開発を行っており、英文も含め毎年数本の原著論文と国内外の学会発表を行っています。おかげさまで10数年間、ほぼ継続してお国から科研費をいただいています。土曜の夜や日曜日は、電話やメールによる相談を受けることはありますが、緊急呼び出しで出勤することは滅多にありません。

臨床検査医はどこが魅力でしょうか?

列挙してみましょう

  • 臨床の診療科であるが、緊急呼び出しはめったに無い
  • (work/life balance がとりやすい分、仕事にも集中できる)
  • どの診療科から転科しても、バックグラウンドを生かすことができる
  • (実際、他科からの転入組が過半数を占めています)
  • 研究や教育に没頭できる
  • 科研費がとりやすい(あくまで私見ですが)
  • まとまった時間が取れたときに仕事の固め打ちができ、在宅で出来る仕事も多い
  • 研究や開発などで企業との付き合いが密なため、医師としての「上から目線」の思考回路でなく、一般社会の常識からも物を見ることができる
  • 「検体管理加算」という制度で病院の収入に大きく貢献できる(500 床規模で年間数千万円!)
  • 専門医試験の勉強を施設横断的に皆で行うため、同期のつながりが大きい
  • 学会が開放的で陰険でない(新人は所属施設を超えて「宝物」のように扱われます)

世界の臨床検査専門医

米国ではclinical pathologist という専門領域のエキスパートとして、地位が確立されています。ドイツでは形態学の病理学と臨床化学の分野は別々に発展しているようです。私は年に何度か国際学会に出かけますが、どこの臨床検査医も大変気さくで、「厳格な医師」といったプレッシャーを感じさせる人にはめぐり合ったことがありません。ワーク・ライフバランスを上手にとって、生体情報を扱うことで患者さんの役に立つことに生きがいを感じています。

アジアの検査医はもっと特徴的です。韓国、台湾、中国、東南アジア、いずれも女医さんが圧倒的多数を占めているのです。内科、外科などメジャー科に従事する夫君に、適確なアドバイスをしていらっしゃるのではないでしょうか。彼女らはみな外国語に堪能で、とても積極的です。そのせいでしょうか、学会の展示場では、臨床検査の機器試薬だけでなく、色とりどりのスイーツやら民族衣装、アクセサリーも並んでいて、これだけでも見る価値アリだと思います。

いまわが国では、女医さんのマンパワーをいかに臨床に還元するかが議論されています。ひとつの解決策は検査医になることではないでしょうか。24時間365日拘束される生活ではありません。つかず離れずの距離で臨床をやり、時間のあるときに仕事の固めうちができる、臨床検査医のお仕事は、確かに女性に向いている(もちろん自分の時間がほしい男性医師にも)と思います。

臨床に行き詰まったり、医学をもっと科学してみたくなったりしたあなた、「臨床検査医」という明るい生き方を考えてみませんか?