日本臨床検査医学会
理事長 大西 宏明
このたび,2024年3月30日付で2期目となります日本臨床検査医学会理事長を拝命いたしました杏林大学の大西宏明と申します.前期には,本学会の運営におきまして様々な皆様から温かいご指導・ご支援を数多く賜りましたこと,深く感謝申し上げます.
本学会は1951年に臨床病理懇談会として発足し,1953年に臨床病理学会,1955年に日本臨床病理学会,2000年から現在の日本臨床検査医学会となり,今年で72年目を迎える長い歴史と伝統のある学会です.1976年に日本医学会に分科会として加盟し,また2018年には日本専門医機構の定める19基本領域学会の一つに認定されるなど,医学・医療において中心的な役割を果たす学会の一つとして,諸先輩方のたゆまぬ努力により発展してまいりました.一昨年には,編集委員会をはじめとした会員の皆様のご支援により,発足当初から機関紙として発行を続けている日本臨床検査医学会雑誌(旧:臨床病理)に加え,念願の英文誌であるLaboratory Medicine International(LMI)誌も発刊されました.
本学会は,すべての医学・医療分野に関わる臨床検査を学術的な立場から先導していく役割を担っています.臨床検査には,情報技術を含めて日々新たな知見が導入されており,その進歩は今後の医学・医療の発展において不可欠な原動力となるものです.本学会は,これらの検査技術の発展を学術面から支援するとともに,臨床検査を熟知した人材を幅広く育成することで,我が国のみならず国際的な医療・医学の発展に貢献してまいります.特に,国が推進する様々な医療施策において必要不可欠である,臨床検査専門医をはじめとした高い専門性を持つ人材を増やすことは急務であると考えており,学会として全力で取り組んでまいりたいと考えております.
一方で,血液などを用いた検体検査は,日本全国どこで検査を受けても同じ結果が得られる均霑化が理想です.2018年12月の検体検査の品質・精度の確保に関する医療法等の一部改正により,この動きは一層加速されています.また,これらは保険医療における適正な臨床検査の実施と評価にも重要です.本学会では,検査の精度管理・標準化の推進と,共有可能な検査データを集積できるシステムの構築により,我が国における医療全体の水準向上を目指します.
先般のCOVID-19 パンデミックでは,PCR・抗原・抗体検査や,検査の感度・特異度,精度管理といった臨床検査の専門用語が一般の社会にも広く浸透するなど,臨床検査の重要性がこれまでになくクローズアップされました.このような公衆衛生の危機においては,臨床検査は治療と並ぶ医療の両輪として,その質と量の確保が国全体の命運を握っていると言っても過言ではありません.今後も新たなパンデミック等が生じる可能性を念頭に置き,本学会は,危機的状況においても決して揺らぐことがないような臨床検査の基盤整備を目指します.
これまで申し上げたような施策は,もとより単独の学会のみで達成できるものではなく,日本臨床衛生検査技師会をはじめとした関連の学会や産業界,そして国や地方自治体との協力が不可欠となります.本学会では,臨床検査振興協議会等を通じたこれら諸団体との協働により,臨床検査を取り巻く様々な問題に対応し,その成果を含め臨床検査の重要性を広く国民に情報発信することで,臨床検査医学のさらなる発展を目指す所存でございます.
日本臨床検査医学会の会員の皆様ならびに臨床検査に関わる皆様におかれましては,これまでと変わらぬご指導とご協力を賜りますようよろしくお願い申し上げます.
2022・2023年度理事長挨拶(大西宏明)2020・2021年度理事長挨拶(村上正巳)
2016〜2020年度理事長挨拶(矢冨裕)