日本臨床検査医学会 Japanese Society of Laboratory Medicine

第1回医学生・研修医のための臨床検査セミナー 開催報告

 臨床検査は日本専門医機構認定専門医制度の基本領域の一つです。疾病の診断や健康状態の把握に欠かせない臨床検査において専門性を有する臨床検査(専門)医の業務は重要ですが、未だ多くの学生・医師にとってなじみが薄いかもしれません。臨床検査(専門)医とはどういった仕事なのか、さらに臨床検査の ‟おもしろさ“ そして ”奥深さ“ を広くお伝えするため、2017年から学生や若手医師を対象とした臨床検査ハンズオンセミナーを開催して参りました。
  今年から新たに臨床検査セミナーと改名し、引き続き好評だったWebセミナー形式で開催しました。また今年はRCPCへの視聴参加が臨床検査領域講習(指導医講習)に認められ、本年も全国より多くの医学生、若手医師、学会員の皆様にご参加いただき大盛況でした。多くのご参加、ありがとうございました。 

概要
 主 催:日本臨床検査医学会 ワークライフバランス委員会、九州支部
 共 催:日本臨床検査医学会 教育委員会、日本臨床検査専門医会 教育研修委員会、日本医師会
 日 時:2024年7月28日(日) 13時~17時
 会 場:Webセミナー
 受講料:無料
 対 象:医学生(5、6年生)、初期臨床研修医、臨床検査専攻医、転科を検討中の医師
 参加者:医学生3名、医師103名(うち初期研修医15名、臨床検査専攻医22名)

  プログラム

セミナーの様子 
1.開会の言葉
東京大学の西川真子先生の司会進行のもと、鹿児島大学の橋口照人先生(日本臨床検査医学会九州支部長)からご挨拶をいただきました。

2.講演1「臨床検査専門医のキャリアパス・大学病院の専門医業務紹介」
長崎大学の長谷川寛雄先生から、ご自身をはじめ、複数の先生方の検査医としてのキャリアパスの紹介や、大学病院での臨床検査専門医の日々の業務について分かりやすくお話をしていただきました。また臨床検査専門医となるまでのコースの選び方や、ダブルボード、サブスペシャリティについてまでバリエーションに富んだ内容で、臨床検査医の実際から可能性についてまで、幅広くお話をしていただきました。

3.講演2「市中病院の専門医業務紹介」
北九州市立八幡病院の木村聡先生から、市中病院での専門医ライフとして検査医の業務内容に加え、学会発表や研究といった多方面にわたるご活動についてお話をいただきました。また、ご自身のワークライフバランスについてグラフ形式で分かりやすく解説していただき、モチベーションとのバランスが重要であること、さらに市中病院における臨床検査専門医の未来と題してのお話もいただき、市中病院での専門医像を先生独自の切り口でご講演いただきました。

4.RCPC
信州大学の松本剛先生より事前にご提示いただいた検査データをもとに、小人数でのグループに分かれ、病態についてのディスカッションを行いました。参加された医学生、若手医師の先生方にはそれぞれ事前にお願いしていた担当の検査項目についての解釈を発表していただきました。それらを元にグループ内でさらなるディスカッションが行われ、より深い病態解釈が進みました。3つのグループよりディスカッションの内容を発表いただいた後、松本先生より症例の解説をしていただきました。活発な議論を導いていただきました多くのファシリテーターの先生方にこの場を借りて御礼申し上げます。
ファシリテーター:
赤坂和美 (釧路孝仁会記念病院)、朝比奈彩 (静岡赤十字病院)、植木重治 (秋田大学) 、大山陽子 (鹿児島大学)、金子誠 (三井記念病院)、常川勝彦 (群馬大学)、野尻明由美 (東京慈恵会医科大学)、山口宗一 (鹿児島大学)、山本正樹 (京都大学) 

5.臨床検査専門研修・臨床検査専門医についての質疑応答
西川先生の司会のもと、臨床検査専門研修・臨床検査専門医についてのQ&Aが行われ、臨床検査専門医の先生方よりご回答いただきました。実際に検査医として従事されている先生方のお話は、臨床検査専門医を目指されている方にとって、臨床検査医のイメージをつかむ貴重な機会になったと思います。
臨床検査専門研修・臨床検査医に関する質問への解答は、学会HPに掲載するため準備を進めています。
本学会の専門医相談・サポートセンターへの問い合わせをご活用ください。
E-mail:support@jslm.org

6.血液が固まる・溶けるをみてみよう
鹿児島大学の橋口先生をはじめとした臨床検査医チームから、血液の凝固・線溶についてのレクチャーがありました。血液凝固の基本的な検査であるPT、APTTをメインに凝固、線溶のメカニズムについての解説や、また実際に動画を使って血液が凝固していく様子を実感していただきました。普段はあまりみることのない凝固の様子を通じて、体内での巧妙な血栓・止血のしくみや、実際の検査手法について理解を深める良い機会になったと思います。

7.閉会の言葉
慶応義塾大学の松下弘道先生(ワークライフバランス委員会担当理事)からご挨拶をいただきました。

セミナー後のアンケート集計結果
セミナー後に実施したアンケートでは、50%の方から「大変良い」、47%の方から「良い」と大変好意的にご評価いただきました。
さまざまなご感想をいただきましたので、一部をご紹介いたします。
・臨床検査専門医について業務内容からやりがい、キャリアについていろいろと知ることができた。
・市中病院、大学病院での実際の働き方の紹介があり、研修医もイメージしやすくなったと思う。
・直接、臨床検査専門医の先生とお話できてよかった。
・初めてRCPCに参加した。普段の臨床のときよりも検査値だけでなく深く考えるため、あらゆる可能性を考える思考がとても勉強になった。
・RCPCに加え、苦手としている凝固線溶系の講義も聴講できた。
・簡潔にスライドにまとめられていた。ビデオの準備をしておられて、内容も分かりやすかった。
・貴重な講演ありがとうございました。内容盛りだくさんでよかったです。検査専門医の普及にも良いセミナーでした。

アンケートの集計結果は、今後の企画の参考とさせていただきます。 ご協力いただいた先生方、並びにセミナーにご参加いただいた皆様、ありがとうございました。