日本臨床検査医学会 Japanese Society of Laboratory Medicine

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臨床検査専門医についてのQ&A 〜学生・初期臨床研修中の方へ〜

臨床検査専門医って?

 臨床検査医学という学問分野があります。これは、基礎医学と臨床医学を結ぶ掛け橋となる総合的な学問です。
 臨床検査専門医とは、臨床検査医学を修め臨床検査を通して診断や治療に役立つ検査結果と関連する情報を臨床医に提供し,検査結果の信頼性を維持するために臨床検査全体を管理する医師のことです。具体的には、診断コメントを作成したり、臨床医からのコンサルトに対応します。また,臨床検査の精度、品質管理の責任を担う医師です。専門性·独立性の高さから、日本専門医機構は臨床検査専門医を基本19領域の専門医の一つとして認定しています。

どんな勉強をするのですか?

 一般検査(尿など)、生化学検査、血液学検査、微生物検査、免疫学的検査、輸血検査、遺伝子検査、生理機能検査などの各論的なこと、臨床検査の特性や検査室管理などの総論的 なことを学びます。
 教科書や資料、講義により知識を学び、検査室において熟練した臨床検査技師のもとで検査技術を理解し、指導医のもとで検査の評価などを研修します。血液学検査を例にあげるなら、血液学の基礎、血液学検査の技術論を学び、末梢血·骨髄塗沫標本の判読を研修し、血液疾患の診断コメントが書けるレベルを目指します。3年間の研修後には臨床検査専門医試験を受験することができます。
 専門医取得後は、これらの基盤を維持し、病院検査室の管理に携わりながら、自分の専門分野をさらに深く追求していきます。

どこで研修するのですか?

 2017年の研修開始にむけて2016年度中には基幹研修病院が公開されます。多くは大学附属病院またはそれに匹敵する規模の病院です。臨床検査領域では約80の基幹施設が認定される見込みです。参考までにこちらをご覧ください。

研修中に臨床はできますか?

 初期研修医を修了して臨床検査プログラムに入りますと、当然臨床検査の研修が主になりますので、例えばベッドを受け持って多くの時間をそのために使うような形は困難と思われます。実際には、多くの後期研修医や専門医は、関連施設で外勤として外来診療や病棟診療を行っていますので、そのような形で臨床と関わっていただくのが現実的かもしれません。

研修中に研究はできますか?

 できます。研究は大いに推奨しています。臨床検査医学は学際的な側面も強く、また研究がやりやすい環境にあります。研修中でも短期間であれば研究中心の生活を送ることも可能です。短期間であれば基礎医学などの研究室で学ぶことも可能です。

専門医の毎日はどのようなものですか?

いくつか勤務先や勤務形態の状況別に例をあげて説明します。

Case 1: 大学病院常勤医

主な仕事:
(1) 診療業務(検査判読、コンサルテーション、検査部管理)
(2) 教育(学生·研修医·検査技師指導)
(3) 研究
曜日 AM PM
月曜日 骨髄像判読 内科外来(外勤)
火曜日 学生実習 骨髄像判読研究
水曜日 内科外来(外勤) 検査部管理業務(会議※)
木曜日 免疫電気泳動演習 骨髄像判読
検査部管理業務
(会議※)
金曜日 内科外来(外勤) 研究
土曜日 骨髄像判読研究  
  • この他、他科からの検査についてのコンサルテーション(適宜)、リサーチミーティング(月1 回)
  • ※会議 (検査部全体業務会議、遺伝子検査業務会議、血液検査業務会議、生化学検査業務会議など)

Case 2: 一般病院常勤医

曜日 AM PM
月曜日 内科外来(外勤) 検査報告書チェック
火曜日 非常勤講師として出身大学で学生実習 骨髄像判読
水曜日 感染症外来(院内) ICT ラウンド
院内感染対策会議
木曜日 検査報告書チェック 研究
金曜日 検査センター指導(外勤) 検査部管理業務
(会議など)

Case 3: 子育て中の女性医師(大学病院非常勤医)

曜日 9:30~15:00
月曜日
火曜日 内科外来
(月1~2回午前のみ:外勤)
水曜日 免疫電気泳動判定
(大手検査会社委託)
木曜日 骨髄像判読
金曜日 学生実習
骨髄像判読
  • この他には適宜、研修中の医師の指導など時間調整のきく仕事を行う。
  • 検査判定·判読はある程度時間の融通が利くため、子供の学校行事などで都合が悪い時は夜子供が寝てから行うこともある。

この他にも、何人かの臨床検査専門医の日常を紹介しています。
こちらのページをご覧ください。

女性医師に向いていますか?

 向いています。臨床検査は範囲が広く深い知識と経験が必要な分野です。しかし、ベッドを持たないなど検査関連以外のduty が少ないという点は他の分野と大きく異なります。基本的に臨床検査医としての当直はありません。
 自分のペースでできる仕事が多く、働き方によっては時間が調整しやすい分野です。2014年4月現在、臨床検査専門医数609 名(男性医師535名、女性75名)で女性医師率は12.2%です。この中で家庭を持つ女性も多く、そのほとんどが子育て·介護と両立しながらそれぞれのペースで仕事を継続しています。
 育児·介護などによる一時的な休職はあっても、常勤·非常勤での復職率は高く、専門性を持ちながらそれぞれの時期に合った働き方を選ぶことができます。ライフワークバランスを考える女性医師にも非常に適していると言えます。

育児中でも専門医取得とそのための研修は可能ですか?

 可能です。実際多くの女性医師が育児をしながら後期研修を行い、臨床検査専門医を取得しています。1週間のうちの勤務(研修)日数や勤務(研修)時間などについては、各施設で相談しながら研修を行います。

臨床検査医の病院内での位置づけは?

 臨床検査医は、臨床検査室の管理、超音波検査などの診断業務、診療科からのコンサルテーションに対応するなど、病院診療に貢献しています。また、保険診療においては検体検査管理加算という制度があり、検体検査の品質を管理している常勤の医師がいますと相当の加算を獲得し、経営面においても貢献しています。

臨床検査専門医として、検査部を有する大学病院や総合病院の他にはどのような働き口がありますか?

 例えば大手の検査センターと契約して、全般的な指導や特定の検査の判定業務を行ったり、健診業務を担うなどの仕事があります。臨床検査専門医は全国的に不足しており、働き口に困ることはありません。

専門医取得後はどのような方向性がありますか?

 臨床検査専門医の資格を保持するという前提で話を進めます。保持するということは5年毎の更新の要件を満たすことです。臨床検査専門医の更新には他の基本領域専門医同様、診療実績、講習会出席が課せられています。
 まず他の関連した専門医資格を取ることについてです。例えば内科専門医の2階に循環器専門医があるようなサブスペシャルティについてですが、臨床検査の2階としての候補は、超音波、臨床遺伝、人間ドックなどが想定されます。これらが2階の専門医として認められれば、臨床検査全般の専門医として活躍しながらより専門性の高い活動が可能です。
 次に、他の基本領域の専門医を取得できるかです。専門医機構は、19領域のどれか一つの専門医となることを原則としていますが、2つ以上の基本領域の専門医資格を取ることを否定はしていません。否定はしていませんが「現実的には難しいだろう」というスタンスです。それはおそらく一つの専門医の更新要件をクリアしながら、他を研修したり、維持したりするのは困難という想定のためと思われます。全体的な状況はそのようなものですが、臨床検査専門医の更新は通常の検査医業務を行っていれば比較的ハードルが低いため、物理的には他の専門医を持てる可能性があります。つまり、ご本人の努力によっては臨床検査の専門医でありながら、病理専門医でもあるということが不可能ではありません。
 専門医資格を保持しつつ、一見臨床検査と関係がなさそうなことを主たる仕事にできるかですが、例えば一般病院の診療科勤務医になっても検査室に関わることで更新要件のうち診療実績クリアできると思われます。開業医の場合は、非常勤で病院検査室に関わるか、検査センターと契約して診断業務を行うことで同じくクリアできるかもしれません。
 学際的意識の高い方は、研究実績をあげ、学生教育に貢献し、是非とも大学医学部の検査関連講座の教授、准教授を目指してください。専門医資格があり、医学者としての研究業績などが相応であれば大学教員としての将来は明るいはずです。